君、思う。[短篇]


怪訝そうに浩介の顔を覗き込むと、いつもヘラヘラ笑っているその顔が少しばかりか強張っていた。


「お前等も、さっさと散れって。」

「そうやって抜け駆けかよー」


ブツブツいいながらも
私の周りに出来ていたその壁が徐々になくなる。


よろしく、と声をかけてきた悠くんもニコリと私に笑いかけるとそそくさと元いた場所へと戻っていってしまった。




「ったく!愛莉…」

握られていた手が
ふっと軽くなった。

「な、なに!?」

「今度から俺が行くから。」


はぁっと溜息を吐くと
浩介は面倒くさそうに渡しにプリントを渡す。


…俺が行く?


「何処に?」

「だーかーら!愛莉の教室。」



…はい?私の教室って…
意味が分からないんですけど。



「用事があるときは俺が行くから。教室で待ってて?」



ふわふわと私の頭を撫でるとその可愛い顔を私に向けて「ね?」と首をかしげた。




きゅん。


「あ、う、ん。分かった。」


不覚にもその顔に
きゅん、としてしまった私。


バレないように
顔を横に背けた。


「あぁ!!」


その瞬間、目に入ってきたものは時計。本鈴ががなるまで残り1分。授業に遅れるなんて有り得ない、そう思った私は浩介にお礼を言うとそそくさと教室を後にした。



「あ、放課後迎え行くからな!」



後ろで聞こえた声に手を上げ返事をして私はまた自分の教室へと猛ダッシュで戻った。







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