【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 やはりというべきか、『高嶺の花』というより『野辺に咲く小花』の装いは、主張の強いマリアの顔立ちには素朴がすぎた。
 姿見に自分の姿を映して一番に思ったのは、「服が着られている」という感想だ。
 
(愛らしいデザインは大好きだわ。けれど、嗜好と外見は一致しないものよ)

 自分の容姿をまっさらな心で見るとき、マリアはいつもがっかりする。
 これまでも可愛い服装にトライして、そのたびに失望してきたのに、性懲りもなく繰り返してしまう。それが、どれだけ愚かなことか分かっているのに。

 がっかりする心を隠して、平静を保つのも慣れたもの。
 しかし今回は求婚者からの求めなので、マリアは情緒がぐちゃぐちゃなまま、応接間に足を運んだのである。

 マリアに無理を言ってきたレイノルドは、少しも悪びれないで長い足を組んだ。

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