【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 清々しい風が吹く丘に、マリアとレイノルドは立っていた。

 城下町を見下ろせるここには、『ハートの木』という変わった樹木が生えている。木の根元が二つに分かれて伸びており、互いの枝が折り重なってハート型の枠のように見えるのだ。それにあやかってか、ここに願った恋は必ず叶うと言われていた。

「どうして、わたくしをここへ?」
「今日、あんたを落とすって言っただろ。兄貴との思い出を上書きしてやる」

 ハートの木がある丘は恋人の聖地となっており、ここでプロポーズを経験した民も多くいる。かくいうマリアも、ここをアルフレッドと訪れたことがあった。
 お忍びで、なんてロマンティックな事情ではなく、王子の視察に付き添ったのである。

< 67 / 435 >

この作品をシェア

pagetop