7歳の侯爵夫人

2

「………どういうことですか?」
一瞬言葉をなくし、しかしなんとか気を取り直したオレリアンが顔を上げ、尋ねる。

「まずは、コニーに会わせて欲しい」
「……コニーは今は私の妻です。王太子殿下とはいえ、妻を愛称で呼ぶのはお控えください」
「貴様!不敬であろう!」
王太子の護衛の1人が憤るが、フィリップはそれを制した。

「いや、たしかに今のは私が悪かった。ヒース侯爵、そなたの夫人に会わせて欲しいのだ」
「失礼ですが、こんな夜更けに、妻にどんなご用件が?」
先触れもなく、王都に戻った翌日のこんな夜更けに訪ねて来るなど、非常識以外の何ものでもない。
一国の王太子に対して不敬ではあるが、この男は自国のためとは言え、コンスタンスを捨てた男だ、と、オレリアンは気持ちを強く持つ。
睨むまではしないが、フィリップの真意を探るべく、強い目で彼を見つめた。

「こんな時刻になったのは謝る。昨日ヒース侯爵夫妻が王都へ戻ったと、先程私の耳に入ったのだ。聞いたら、矢も盾もたまらず来てしまった」

矢も盾もたまらず…。
その意味がわからず、オレリアンは黙った。

王太子はもうすぐ隣国の王女と結婚するはず。
何故、今更コニーに会いに来た?
捨てたはずの元婚約者に、一体何の用があると言うのだろう。
< 153 / 342 >

この作品をシェア

pagetop