7歳の侯爵夫人
こうして、ルーデル公爵令嬢コンスタンスは10年にも及ぶ婚約期間とお妃教育の末に、婚約を解消された。
未来の王妃への道を閉ざされ、お妃教育に費やしてきた日々を無駄にされ、下位貴族の次男坊でしかなかった男を結婚相手として充てがわれたのである。

婚約の解消が決まった後、フィリップはコンスタンスと2人きりで会える最後の…、僅かな時間を与えられた。
お互い婚約が決まったら、二度と2人きりで会うことなど出来ないのだから。

コンスタンスは泣いていた。
いつも凛として冷静な彼女が、目を真っ赤にして、唇を震わせて泣いている。
その涙が、王太子妃になれないことを悔しがってのものなどではなく、フィリップの妻になれないことが悲しくてのものだと、フィリップはわかっている。

フィリップは彼女の震える肩を抱き寄せた。
抱きしめた彼女の体は華奢だった。
彼女はこんな華奢な体で、10年間も厳しいお妃教育に耐え、自分の婚約者でいてくれたのだ。

いつの間にか、フィリップの目にも涙が溢れていた。
心の底から、コンスタンスが愛おしいと思う。
でももう、歯車は狂ってしまった。

『国のため』という名の元、若い2人は別の道を歩むことになったのである。
< 171 / 342 >

この作品をシェア

pagetop