7歳の侯爵夫人
もう、我慢出来なかった。
国のために犠牲になったコンスタンスが、結婚し、さらに不幸になっている。
今度こそ、彼女を守りたい。

フィリップは母である王妃に訴え、コンスタンスを救出する策を練った。
コンスタンスの結婚に責任を感じている王妃が、それを拒むはずはない。

王妃はもうすぐ嫁となる隣国の王女に自分の願いとして頼みごとをした。
『王太子の元婚約者が夫に虐げられているので離縁させ、保護したいと思う。彼女の相手を見定められなかったのは私の罪。どうか、私の侍女として側に置くことを許して欲しい』
要約すればこんな内容だ。
そこに、将来的には側妃に…などということは一切触れていない。

のちにヒース侯爵にはコンスタンスが側妃になることも王女は承知していると告げたが、さすがに成婚前にそこまでは話していない。
気持ちの奥底まではわからないが、縁談をゴリ押しした負い目がある王女は元婚約者が王妃の侍女になる件は了承した。

これで、コンスタンスを王宮に迎える手筈は整った。
おそらくルーデル公爵も、コンスタンスを侍女に…、そして側妃にという話に意義は唱えないだろう。
最初から側妃ではなく、一度結婚し、出戻った後なのだから。

成婚式が翌月に迫ったある夜、漸くノルドからヒース侯爵夫妻が王都に戻ったと報告があった。
今日から、ヒース侯爵が業務に復帰したと。
公務で遅くに帰城したフィリップがそれを聞いたのは、すでに夜になってからだ。

フィリップは決意を新たに、拳を握った。
コンスタンスを迎えに行こう。
たとえ王宮内で彼女への蔑み、嘲笑があろうと、母と自分が守る。
万が一王太子妃側の虐めや嫌がらせがあったとしても、守り切ってみせる。

そうしてすでに夜更けではあったが、フィリップはノルドと護衛騎士のみを連れ、密かにヒース侯爵邸を訪ねたのである。
< 175 / 342 >

この作品をシェア

pagetop