7歳の侯爵夫人
コンスタンスが自分の今の状況を知ったのは、ルーデル公爵邸に戻る日の朝だった。

目覚めてからヒース侯爵邸を出るまでの数日間、家族はコンスタンスを混乱させないためにと、鏡も見せず、オレリアンにも会わせなかった。
しかし、この先全ての鏡を隠すわけにも、ずっと彼女を外に出さないわけにもいかない。
それに、鏡は見なくとも成長して女性らしくなった自分の体に気がついたコンスタンスは、最初見た時怯えて泣き叫んでいた。

彼女からすれば昨日まで7歳だった自分の体が、一晩で手足も、胸もお尻も大きくなってしまったのだから、怯えるのは当然のこと。
だが父の話を聞き、ひとしきり泣くと、コンスタンスは今の不思議な状況を少しだけ理解した。

公爵はヒース侯爵邸からコンスタンスを引き取る前に、コンスタンスに今までのことを告げた。
細かい、心に痛みを伴うような話はなるべく排除して、だが、事実はほぼ伝えたつもりだ。
7歳の知能のコンスタンスがどこまで理解するかはわからないが、彼女に隠したり、嘘をつくのは嫌だったから。
それは、コンスタンスが記憶を取り戻した時、再び彼女を傷つけることになるだろうから。

告白の場には、母や兄、そしてこの邸の主人であるヒース侯爵もいた。
目覚めた日、部屋に飛び込んできたのはこの人だ…、とコンスタンスは彼を見て思った。
あの時は驚いて泣き出してしまったけど、よく見るととても綺麗な男の人だ。
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