7歳の侯爵夫人
フィリップ殿下とコンスタンスの仲は(おおむ)ね良好だった。
幼馴染のような2人は元々仲良しだったし、話や好みも合っていたようだ。

フィリップ殿下はコンスタンス同様幼い頃はやんちゃであったが、王太子教育が始まるといずれ国王になる自分をよく理解し、教育も難なくこなしていく。
12、3歳頃にはすでに将来楽しみな、優秀な王太子として知られており、生まれ持ったカリスマ性も遺憾無く発揮されていた。

コンスタンスもまたお妃教育の成果か自由奔放だった少女の姿はすっかり失せ、やがて淑女の鑑とまで賞賛されるに至り、王太子と2人、並び立つ日を国民に嘱望されていた。

2人の仲に所謂(いわゆる)燃えるような恋愛感情はなかったが、穏やかに育んでいる気持ちは当然あった。
一番近い親友であり、将来国のトップに立つ同士として。
政略で決められた婚約者ではあるが、たしかに、お互いを想い合う気持ちはあったのである。

ところが…、お互いの教育も終わり、翌年には結婚を…、というところで、状況が一変する。
大国である隣国の王女が表敬訪問の折にフィリップ殿下に一目惚れし、隣国から縁談が持ち込まれたのである。
当然王太子にはすでに婚約者がいると一旦は断ったものの、二度三度と言って来られれば、拒絶し続けるわけにもいかなかった。
隣国の力を恐れる貴族たちにも突つかれ、結局国王は折れ、王太子とルーデル公爵令嬢の婚約を解消せざるを得なかった。

そして、どんなに娘を溺愛する公爵でも、国の命運を左右するような問題なら涙を堪えて受け入れるしかなかったのだ。
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