7歳の侯爵夫人
「…ここまでは理解できたか?」
父にたずねられ、コンスタンスは小さく頷いた。

正直、数日前にフィリップ殿下と婚約したという記憶しかないコンスタンスには、あまりよくわからない。
今のフィリップはまだコンスタンスにとって仲の良い幼馴染でしかないのだから。

ただ漠然と、この先フィリップ殿下と一緒にいる未来はないのだな…、と思ったら、胸の奥がキリキリと痛んだ。
わけもわからず哀しくなり、唇を噛んで、俯く。
ルーデル公爵はそんな娘の姿を見て、思わず瞳を揺らした。

当時の…、あの婚約解消の時のフィリップ殿下の気持ちも、コンスタンスの気持ちも、公爵は知らない。
コンスタンスはあの時、
「殿下とはよくよく話して、2人で納得しましたから」
と言っていた。
父親としても、それ以上は聞けなかった。
だから、2人が泣く泣く別れたのか、笑顔で別れたのかはわからない。
ただ、
「父の力が及ばず、申し訳ない」
と娘に謝った。

穏やかではあるが2人が愛を育んでいたのは確かだったと思う。
そろそろウェディングドレスの仮縫いだと、いつも冷静な娘が頬を染めていたことも覚えているから。
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