7歳の侯爵夫人
こんな、王宮に向かう馬車の中で、まさか母の惚気話を聞かされるなんて。
思ってもみなかった暴露話に、エリアスとコンスタンスは苦笑した。

「王妃様が貴女に固執するのは、あるいは初恋相手の娘だからかもしれないわね。貴女が7歳でフィリップ殿下と婚約したのも王妃様のごり押しだもの。お父様も私もかなり抵抗したのだけれどね」
「…抵抗?」
両親がコンスタンスの婚約に反対だったとは初めて聞いた。
「母上たちは…、コニーが王太子妃になるのは嫌だったのですか?」
「当たり前よ。いくらなんでも7歳で婚約なんて早すぎるわ。それに王家だなんて、そんな気苦労の多いところに可愛い娘を嫁がせたいものですか」
「なんだ、父上も母上も私と同じ気持ちだったのですね」
「お兄様も?」
「それこそ当たり前だ。私の可愛いコニーを王室に取られるなんて耐え難かったさ」
「でも、そんなこと全然…」
「面と向かって言えるわけないだろう?コニー自身が納得して、殿下とも仲良くやっていたのだから!…って、ごめん」

エリアスは口を手で押さえ、バツが悪そうに謝った。
フィリップとの仲を指摘したことを後悔したのだろう。
「嫌ね、大丈夫よ、お兄様」
コンスタンスはそんな兄を見て微笑んだ。

コンスタンスは両親や兄の気持ちを初めて知った。
王妃を輩出することは、ルーデル公爵家にとっても名誉なことだと思っていた。
だから婚約解消されたことを不名誉だと申し訳なくも思っていたのに、両親も兄も、本気でそんなことは気にしていなかったのだ。
寧ろ王家に嫁がせることを嫌がり、今回のことにも憤りを感じているだなんて。
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