7歳の侯爵夫人
(あの日…?あの日っていつ?)
コンスタンスは頭を押さえた。
何か思い出せそうで、思い出せない。
ただ、王妃にそう迫られた場面は頭に浮かんでいる。

そう、あれはもしかしたら、フィリップとの婚約が解消されて打ちひしがれていたコンスタンスに、王妃が告げた言葉だったのかもしれない。
近衛騎士オレリアンとの縁談をねじ込んできた時の。

(その時からすでに私は、この人の手のひらの上で…!)
目眩がする。
喉の奥に、苦いものがこみ上げてくる。
だがコンスタンスはこみ上げてくるものをこらえ、王妃を見据えた。

「公式寵姫の話は受け入れられませんわ、王妃様。私はヒース侯爵オレリアンの妻ですもの」
「口を慎みなさい、コンスタンス。貴女の気持ち次第で、ヒース侯爵の処遇にも関わるのですよ」
それは、コンスタンスが拒めばオレリアンが罰せられるとでも言うことだろうか。
コンスタンスは唇を噛み、睨むように王妃を見据えた。

オレリアンの、あの、穏やかな笑顔が思い出される。
自分のせいで、また彼に迷惑がかかるのだろうか。
だが、今この状況を、この話を受け入れたりしたら、彼はもっと傷つくのではないだろうか。
まだ半月しか関わっていないが、きっと彼はそういう人だと思う。
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