7歳の侯爵夫人
一方オレリアンの方も、コロコロと表情を変えるコンスタンスに不思議な感覚を覚えていた。

結婚していた一年余りの間、オレリアンはコンスタンスの笑顔をほとんど見たことがない。
笑顔といっても、口角を僅かに上げ、顔に貼り付けたような笑顔である。

常に公爵令嬢として、王太子の元婚約者としての威厳を保っていた彼女は、いつだって背筋をピンと伸ばし、凛として立っていた。
人に(かしず)かれるのが常であり、弱いところは一切見せなかった。
喜怒哀楽を表情に出さず、可愛げもなかった。
つまり…、つまらない女だったのである。

先日まで子爵家の息子でしかなかったただの騎士である自分を、見下しているようにも思えた。
花嫁と引き換えに爵位と莫大な持参金を手にした金の亡者のように思って蔑まれているのかもしれないとも思った。

実際、貴族の中ではそんな風に噂されているのも知っている。
でも…、別に、金も高位貴族の身分もいらなかった。
王命だから、断れなかっただけだ。
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