7歳の侯爵夫人
コンスタンスの左手の傷は、思いの外深かった。
血が大量に失われたため、顔は蒼白で、唇の色も無い。
だが、処置が早かったため、命に別状はないという。

侍医の治療を受けた後は、国賓などが来た時に使用する貴賓室を与えられ、そこで引き続き治療を受けることになった。
傷ついた娘を見て取り乱した公爵夫人は連れて帰ると泣き叫んだが、結局は、ある程度動けるようになるまで無理に動かさない方がいいという侍医の言葉に従う形になった。

あれから2日間、コンスタンスは眠り続けている。
怪我だけじゃなく、痺れ薬と媚薬を同時に飲まされたことも作用して、意識のない状態が続いているのだ。
手首の傷は、媚薬に抗おうとしたコンスタンスが自ら付けた傷だという。
「変な副作用がなければ良いのですが…」
と、侍医はポツリと零した。

この2日間、貴賓室はルーデル公爵家の者たちで固め、たとえ王家の者であろうと近寄れないようになっている。
看護は公爵夫人と侍女のリア、アンナで行い、父と兄も仕事の合間に頻繁に顔を出す。
そして当然夫であるオレリアンは、妻がいつ目覚めてもいいように、常に傍に寄り添っていた。
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