7歳の侯爵夫人
「まぁでも…、厳密に言えば私の初恋はオレールかもしれないわ。だってたしかに私は、7歳の時貴方に恋をしたのだもの」
そう言ってコンスタンスはコテンと小首を傾げた。

「そんな可愛い顔したって…、騙されないよ」
「ふふっ、可愛いの?」

2人の時間に慣れてきたコンスタンスは容赦なく可愛い言葉や仕草を繰り返すため、オレリアンはいつも押され気味だ。
だが、それも彼にとっては楽しい。
だからってやられっぱなしでいるつもりはないが。

オレリアンが
「まぁ俺だって…、ファーストキスはコニーだしね」
などと言ったから、コンスタンスは目を丸くした。
「え?だって、貴方には恋人が…」
「たしかに結婚を前提に付き合ってはいたけど、相手だって貴族の令嬢なんだ。婚約前に手を出したりしないよ」

やはり彼は頭の天辺から足の爪先まで生真面目な騎士様だ。
オレールらしいと、コンスタンスは目を細めて夫を見上げた。

「…嬉しい」
頬を染め呟く妻の様はあまりにも可愛らしく、カフェの中じゃなければ抱きしめてしまっただろうとオレリアンは自嘲する。

「でもまぁまさか…、奪う方じゃなく奪われる方だとは思わなかったけどね」
オレリアンが悪戯っぽい目で笑う。
そういえば『7歳のコンスタンス』は、自分から彼にキスしたのだった。
なんともおしゃまな7歳だった。

まぁ、見た目は大人だったけれど。
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