7歳の侯爵夫人
「私だって、オレールが初めてだったわ」
コンスタンスが呟く。

王太子とは10年間も婚約者同士だったが、ダンスやエスコートの折に腰に手を回す以上の触れ合いはほとんどなかった。
王太子も婚約者とはいえ、婚姻前の公爵令嬢に手を出すようなことはなかったのである。

「じゃあ、これから2人でたくさんの初めてを経験していこう」
オレリアンが差し出す手に自分の手を乗せ、コンスタンスが笑顔で頷く。

「とりあえず…、馬車に戻ったら2回目のキスをしてもいいかな?奥様」
「ええ、よくってよ、旦那様」
戯けるように答えたが、コンスタンスの顔は真っ赤だ。

「じゃあ、まずは練習」
そう言うとオレリアンはコンスタンスの左手を持ち上げ、その手首に口づけを落とした。

この生涯消えないであろう傷跡は、彼女が王太子よりオレリアンを選んでくれた証であり、宝物であるから。
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