7歳の侯爵夫人
しかし、なかなかそう上手くはいかないものらしい。
にわかに病を得た義父が急逝し、俺は突然伯爵家を相続することになった。

後継者としての日も浅く勉強が進んでいなかったため、それからの俺は騎士団の仕事と領地経営の仕事、そして貴族としての勉強で目も回る程忙しくなった。
幸い伯爵家にはマテオという優秀な執事とジェドという優秀な領主代理がいて、俺は彼らに支えられ、なんとか仕事をこなしていたが。
乳兄弟のダレルが常に側で助けてくれたのも、大きな力になっていた。

だが、義父が残していった若い後妻カレンもまた悩みの種となった。
年の離れた夫が物足りなかったのか、カレンは義父が元気なうちから何かと俺に擦り寄って来たのだ。
そして義父が亡くなってからの態度はあからさまで、恥ずかしげもなく俺に『好きだ』と伝えてきた。
平気で抱きついてきたり、部屋に押しかけられたりして、俺は四六時中自室に鍵をかけるハメになった。
書類上義母である彼女を追い出すわけにもいかず、ただ、避けることでわかってもらうしかない。
忙しい中、余計なことに頭を悩ませたくもなかった。

そんな有様だったから、セリーヌとの結婚話は必然的に後回しになっていた。
『きっとセリーヌならわかってくれる』
『きっと彼女なら待っていてくれる』
そんな根拠のない思い込みが、後々取り返しのつかない事態になるとは思わずに。
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