7歳の侯爵夫人
妻の部屋を出ると、オレリアンは扉の前に控えていた執事のマテオに医師を呼ぶよう指示した。
そして、彼女の両親であるルーデル公爵夫妻に使いをやるようにも伝えた。
娘が目を覚ましたと聞いたら、公爵夫妻はすぐに飛んできて彼女を連れ帰ることだろう。

事故が起きた時にすぐに連れ帰ると言った公爵に、「頭を打っているから動かすのは危ない。せめて目覚めてから」と言って拒んだのは自分だ。
娘に付き添うと言う公爵夫人に「目覚めたらすぐ連絡するからここは任せて欲しい」と言ったのも自分。
それでも「信用出来ない」となかなか引き下がらない夫妻に、頭を下げ、なんとか帰ってもらったのだ。

だから目が覚めた以上、公爵夫妻を拒む理由はもうない。
それにコンスタンスだって、もうここには居たくないだろう。

オレリアンは扉に背を預け、俯いた。
扉の向こうからは、未だに泣き続ける妻の嗚咽が聞こえる。
その泣き声は、まるで子供のように聞こえた。

(あんな風に、泣く人だったのだな…)

オレリアンは何か覚悟するように顔を上げ、妻の部屋から遠去かって行った。
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