7歳の侯爵夫人
王都に戻った俺を待っていたのは、様々な嫉妬、及び嘲笑だった。

美しい公爵令嬢を娶ったことへの嫉妬と羨望。
それと引き換えに手にした叙爵や領地拡大への蔑み、嘲笑。

もちろん、騎士仲間や近しい人たちにはわかってくれている人間もいたが、それでも俺にとってはかなりの重圧だった。
だからそれを見返すには、跳ね返すには、今まで以上に武勲を挙げるしかない。
そして、領地を、領民を潤わせるしかない。

俺は、夢中で働いた。
だから、また俺は、間違えてしまったのだろう。

ジェドとは領地経営の報告を定期的にやり取りしていて、マテオからも侯爵家の報告が定期的にあがる。
2人とも時々コンスタンスの様子も書き送って来て、口々に『領内の住人に慕われている』『使用人に慕われている』『侯爵夫人としての仕事を立派にこなしている』と言って、マテオなどは『様子を見に来て欲しい』とまで書いてくる。

だが、肝心のコンスタンスからは全く手紙類が届かない。
俺も忙しさにかまけて最初に2通ほど送っただけだが、まぁ、元々気持ちの通じ合っていない夫婦なのだから、返事がなくても仕方ないだろう。

俺は彼女から手紙の一通さえも届かないことを特に不審にも思わず、放置した。
ジェドやマテオが彼女を褒めるのも、領民や使用人が彼女を慕うのも当然のことだろうと。
彼女は本当は未来の王妃になるべきだった女性であり、この国最高レベルの貴婦人なのだから。
そう思い込んでいたのだ。
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