7歳の侯爵夫人
「使用人たちには分け隔てなく接し、いつも下の者を気遣ってくれています。食事にも生活にも何の不平不満も言わず、毎日穏やかにお暮らしいただいてもおります」
「それはそなたたち使用人たちが有能で文句をつける隙も無いからだろう?」

「領地を散策されては領民に声をかけ、何か困っていることはないかと聞いていらっしゃいます」
「彼女は本来なら王妃になられる方だったからな。下々を気にかけるのは身についているのだろう」

「最近ではジェドも私も、領内の作物の栽培や加工品、森林利用の計画から、商人との取引まで、旦那様に報告を上げる前に奥様に色々相談させていただいております。いつも真摯で的確なお返事をいただき、その博識に舌を巻いております」
「彼女は上に立つ者として政治も産業もありとあらゆるものの最高レベルの教育を受けているんだ。それもまた然りだろう」

俺が答えるたび、マテオの眉が吊り上がり、口角が下がっていくのがわかる。

「奥様は教会や孤児院への慰問も積極的に行っております」
「それはやはりお妃教育で…」

「旦那様!!」

とうとうマテオが立ち上がり、大声を上げた。
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