7歳の侯爵夫人
「…ダレル。すぐに義母上の息がかかった使用人を調べろ」
「はっ!」
命じると、ダレルがすぐに部屋を出て行く。

俺は本当に愚かだ。
セリーヌの時も散々嫌な目に遭ったのに、今回は義母と妻が距離的に離れているからと気にも留めなかった。
嫌がらせは、本人に会わなくとも出来るのに。

俺の権限で、ダレルは義母と義母の侍女の部屋を調べた。
義母が実家から連れてきた、昔から義母に仕えている一番忠実な侍女だ。

そして侍女の部屋から、明らかに侍女が持つには不自然なほど高価な、絹のハンカチと皮の手袋が見つかった。
手紙類は一通も見つからなかったから、恐らく捨てられてしまったのだろう。

ダレルがそれを持って来た時、俺は言葉を失った。
絹のハンカチにも、皮の手袋にも、ヒース侯爵家の紋章が刺繍されていたのだ。
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