もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 浮かんできた仮説を拭い去るように、おでこに置かれている前足を退()かそうと手を伸ばしたところで入り口が開いた。

「いかがで……なにを、なっているのですか?」

 真面目なお伺いの言葉は、自分が余計に滑稽に思えた。

「もしや、お顔にお手、をされているのでしょうか」

 至極真面目を通そうとするものだから、ため息を漏らす。

「まさか。そんなわけないでしょう」

 もしかして笑わそうとして冗談で言っているのかしら。
 いい方に考えてみても、男性はすでにマリーではなく犬の方に興味を向けていた。

「でん……いえ。カーティス。具合はよろしいでしょうか」

 かしこまって尋ねるとカーティスと呼ばれたハスキーは前足こそ外したものの、フンと鼻を鳴らし顔を背けてしまった。

 これではどちらが上かわからない。

 せっかくのもふもふのふわふわでも、どうやら性格はかなりのわがままに育っているらしい。
 かわいいかわいいと、甘やかされているのだろう。

 なんとなく残念に思いながら、頭を下げる。

「それでは、私はこれで」

「え、ええ。ありがとうございました。お送りいたします」

 臨時の治療依頼。
 そのときはただそれだけだと思っていた。
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