もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
マリーが出て行った部屋で、イーサンはぼそりと呟く。
「子どもだったとはいえ、間違えますでしょうか」
意味深なイーサンの言葉は耳に入らないフリをして、淡々と告げる。
「ほかの世話係が回復しても、まだ寝込んでおくように通達しろ。マリーがいなければ立ち行かないのだと感じれば、世話係を投げ出す真似はしないだろう」
イーサンはやれやれとため息を吐く。
「マリー様が逃げ出さない裏工作ですか? こちらの顔もエリック様の一面であるとは、気付いていないのでしょうね」
確かにマリーに対して冷たくしていたのは演技だった。
しかし冷淡な行動全てが演技というわけではない。
隣国との交渉の際、ただの穏やかな王子では舐められるだけだ。
隣国との争いを平和的解決に導いた。魔力を持たない第三王子。そんな男が優男なわけがないと、素直なマリーでは考えが及ばないらしい。