もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 魔力を封印する前のエリックは、絵に描いたような傲慢な王子だった。強大な魔力を持ち、誰もが羨む王族の生まれ。整った顔立ち。

 一を言えば十わかる聡明な子どもであったエリックは、毎日がつまらなかった。

 魔力のコントロールを(おろそ)かにし暴走した力は、そのまま自分の怠慢さを表していた。王子としての資質に欠けた自分へ、神からの警告だったのだと思う。

 魔力を失い、人の痛みを知った。

 そして俺はマリーと出会うべくして再び出会ったのだ。

 まだマリーとの記憶を思い出す前から、マリーの行動ひとつひとつを目で追っていた。
 時間が空けば、カーティスの体を借り、はたまた自らマリーの元へ(おもむ)いた。

 時間が空かなければ、マリーと会えるように公務を巻きで進めていると気付いたときには、思わず苦笑した。

 俺の心の大半を占めるのは、意表を突く行動をし、考えが全て顔に出る素直な性格で、屈託なく笑い、もふもふをこよなく愛している、どこか変わっているマリー。

 麗しの王子と評される俺を気にもせず、聖獣に夢中であるのに、俺の体調が悪ければ怯まず俺を真っ直ぐに見つめる。

 そこへ来て、マリーが図らずも契りを結んだ娘だったと記憶が繋がって……。
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