推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)
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久しぶりのオフ。俺はある確信を得てまひるのもとへ向かっていた。
梅雨入りして二週間目。今年はまれにみる長雨で、おかげでロケがいくつか中止になった。
しかも、三田さんは白根万喜の写真集撮影へ帯同していて日本にはいない。
ひとりでの外出を禁止されていたけれど、彼女の代わりの新人のマネージャーを誤魔化すのは簡単だった。俺はジムに行くと嘘をついて、マンションを出たのだ。
まひるの店まで残り二キロくらいのことろで、沿道に大きな袋のようなものが転がっているのが見えた。それが人だと認識したのはその横を通過した時だ。
慌てて車を止め、駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
ぐったりとしているその人を抱き起す。それからその人の顔をみて驚いた。
「まひる!」
まさか死んでいるなんてことは……一瞬嫌な考えがよぎったが、まひるは俺の顔をみて目を見開いた。
「よかった。生きてはいるな。動けるか?」
「……うん。でも、腕が……」
「腕? どっちだ」
明らかに動かない様子の右腕を俺はそっとつかんだ。袖をまくろうとするとまひるは顔をしかめる。
「痛いのか。かわいそうに」
折れているかもしれない。そう思った。とにかくこのままになしておけないと俺はまひるを抱き上げた。
「雄飛?」
困惑を露にするまひる。その顔をみて少しへこむ。そんなに嫌がらないでもいいだろうに。
「……まずは車にのせるよ。いいよな」
「うん……」