推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)

***

 久しぶりのオフ。俺はある確信を得てまひるのもとへ向かっていた。

梅雨入りして二週間目。今年はまれにみる長雨で、おかげでロケがいくつか中止になった。

しかも、三田さんは白根万喜の写真集撮影へ帯同していて日本にはいない。

ひとりでの外出を禁止されていたけれど、彼女の代わりの新人のマネージャーを誤魔化すのは簡単だった。俺はジムに行くと嘘をついて、マンションを出たのだ。

 まひるの店まで残り二キロくらいのことろで、沿道に大きな袋のようなものが転がっているのが見えた。それが人だと認識したのはその横を通過した時だ。

 慌てて車を止め、駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

 ぐったりとしているその人を抱き起す。それからその人の顔をみて驚いた。

「まひる!」

 まさか死んでいるなんてことは……一瞬嫌な考えがよぎったが、まひるは俺の顔をみて目を見開いた。

「よかった。生きてはいるな。動けるか?」

「……うん。でも、腕が……」

「腕? どっちだ」

 明らかに動かない様子の右腕を俺はそっとつかんだ。袖をまくろうとするとまひるは顔をしかめる。

「痛いのか。かわいそうに」

 折れているかもしれない。そう思った。とにかくこのままになしておけないと俺はまひるを抱き上げた。

「雄飛?」

 困惑を露にするまひる。その顔をみて少しへこむ。そんなに嫌がらないでもいいだろうに。

「……まずは車にのせるよ。いいよな」

「うん……」

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