推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)
――十年前。
短大に通うため上京してきた私は、新宿にあるイタリアンレストランでアルバイトをしていた。
そこで私はユウヒ――司馬雄飛と出会った。
雄飛はアイドルグループのメンバーとして活動していたようだったが、いわゆる“売れない”アイドルだったので、テレビにも出たことがない彼らを知る人は少なかった。
そのころの雄飛の月給は三万しかなく、生活のためいくつかのバイトを掛け持ちしながら友人宅を泊まり歩いていたそうだ。
苦しい生活。でも彼はいつもキラキラしていた。
180センチの長身に長い手足。
夜の闇のような漆黒の髪と意志の強さを感じる大きな目。低くて甘い声。不思議なくらい自信に満ち溢れていたて、だから私は彼に興味を持ったのだ。
同じ十九歳。それだけじゃなく、私も雄飛はとてもよく似ていた。
出身地が同じで、母子家庭。バイトばかりで東京の友達は少ない。
好きなアーティストが同じ。
目玉焼きは半熟。
コーヒよりも紅茶。
結婚したら子供は二人。
飼うなら猫よりも犬がいい。
それから年を取っても手をつないで歩きたい。
やがて私たちは生活費を浮かせるために同棲をはじめた。