政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 織田家の令嬢は、私に釘を刺すためだけに女子トイレに来たらしく、個室には入らずそのまま出ていった。

 彼女は青扇によくいたタイプ。マウンティング好きのサディストだ。

 挑発に乗った相手をぎゃふんと言わせ、徹底的に叩き潰すのが趣味のような人。噂もよく聞いたし、学園の外廊下の隅で女子生徒を泣かせているのを、私も見たことがある。

 あれは酷かった。

 すれ違いざまにほんの少し腕が触り、以知子さんが大袈裟によろめいてペンケースを落とした。

『これ、特注で作らせた一点物のペンケースなのよ』と、騒いだ彼女はこれみよがしに号泣しはじめた。

 おろおろする女子学生を、取り囲む以知子さんと彼女の取り巻きたち。

 すると後ろから歩いてきた蘭々さんがそのペンケースを拾い、『大丈夫よ、傷はないから』と以知子さんに手渡した。
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