政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 負けは許されない。勝っても勝っても、次から次へと押し寄せる波の大きさや、彼にのしかかる重圧がどれほどのものか、私には想像もできない。

 でも秘書としてできることはある。

 今回の出張は第一秘書の宗方さんが同行していないから、私がしっかりしなければいけない。

 たとえ微力でも全力を尽くそうと心に誓い、手帳と書類を開いた。

 確認事項、スケジュール。何度もなんども心の中で繰り返す。
 私はもう二度と失敗はしない。須王専務を負けさせるわけにはいかないのだから。


 飛行機が無事釧路空港に無事到着すると、大丈夫だと言うのに専務はボストンバッグを私の手から取り上げる。

「すみません……」

「随分熱心に書類を見ていたな」

「え?」

「大丈夫だぞ。今回の視察は、チェックポイントがはっきりしている。だから難しい顔で心配しなくても大丈夫だ」

「私そんな難しい顔していました?」

 専務はおもしろそうに白い歯を見せて笑いながら頷いた。

「小旅行だと思っていいよ。時間に余裕があったら丹頂鶴でも見に行こう」
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