桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
寧々が急いで玄関へと向かい、私も立ち上がると彼女の後をついて行った。
「おかえりなさいませ、旦那様。結婚したばかりの新妻を置いて朝帰りとはいい御身分で」
「ね、寧々!?」
もともと私の世話をしてくれていた使用人だという事もあり、彼女は初夜すら一緒に過ごそうとしなかった匡介さんに怒り心頭なのだろう。さっきまで私を励ましていた笑顔は消えて、匡介さんを鋭く睨みつけている。
「……すまない。昨夜の用事は前々から決まっていたことで、どうしても反故出来ない約束だったんだ」
私と寧々を見つめて無表情のまま話す彼に、昨日の後ろめたさがあるのかさえ分からない。私達の結婚式だって昨日今日決まったことではないのに、なぜそちらを優先されなければいけなかったのか?
「だから、その用事っていうのは何です? 奥様には言えないような相手との約束だなんて言いませんよね?」
寧々は匡介さんを相手に問い詰める事を止めようとしない。私の為なのはわかるけれど、そんな事をして匡介さんが寧々をクビにしないかとハラハラしてしまう。
「そうだ、杏凛にも今はまだ話すことが出来ない。悪いが少し部屋で休ませてもらう、杏凛は寧々とゆっくり過ごしているといい」
それだけ言うと匡介さんは疲れた様子で自分の部屋へと入って行ってしまう。カチャリと中から鍵をかけられた音がして、なんとなく彼が私の事を拒絶しているように感じた。