桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜


「何です、あの態度! 奥様が一人で帰りを待っていたというのに、信じられません」

 怒りを隠そうともしないで、寧々(ねね)は朝食の後片付けを始める。残されたままの一人分は彼女が「私の昼食にさせてもらいます」と言ってくれた。
 新婚初夜に私を家に一人残してまで、会わなければいけない相手とはどんな人物なのか気にならない訳がない。しかしそれすら匡介(きょうすけ)さんは私に話す気はないと……

「私って、本当に何の価値もない妻なのね……」

 期待してはいけない、そう思って匡介さんと結婚したはずなのに現実の扱いを知るたびに肩を落としてしまう。昨日見せてくれた優しさも、やはり彼の気まぐれだったに違いない。

「そんな事はありませんよ、杏凛(あんり)様の良さも分からないような旦那様で私はガッカリです」

 そうやって寧々は何度も私を励ましてくれる。
 だけど……私達にとって特別な夜に約束を交わすような相手が他の女性だとしたら? 私の中で浮かんだのはいつも匡介さんの傍にいた女性、あの人は結婚式に来ていなかったから。
 あんなに素敵な女性がすぐ傍にいれば、私のような女は霞んで見えるでしょう。それなのに匡介さんは何故私を契約妻に選び、祖父の会社を立て直してくれると言うのか……この結婚は分からないことだらけで。

「彼には隠さなきゃいけないような事があるのよね、きっと」

 ふう、とため息をついて匡介さんの部屋の扉を見つめてみる。

「浮気だったら、許しませんけどね! 私は」

 そう言って持っていた掃除機を振り回す寧々が逞しすぎて、沈んだ気持ちだったのに思わずつられて笑ってしまったの。


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