桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「ええ、そうでしょう。私もいつかこの二人のような夫婦関係を築けたらと思って……いえ、何でもありません」
余計な事を言ってしまったのかもしれない、未来のない自分らの結婚にそんな事を望まれてもきっと匡介さんも困るはず。
そんな事も考えず、つい私の理想ばかりを押し付けてしまって……
「杏凛、君は……」
「本当にごめんなさい、聞かなかったことにしてもえらえませんか?」
驚いた様子の匡介さん。彼の負担になるような発言はしないようにするつもりだったのに、うっかり漏らした本音をしっかりと聞かれてしまっていた。
「それは出来ない。杏凛、君が望むのならば俺は……」
匡介さんが手を伸ばし私の手のひらをを掴んむ、そのまま真剣な表情で何かを言いかけたその時。
「はーい、杏凛ちゃん一押しの激辛冷麺お待たせしました!」
私たちの気まずい空気を遠慮なく壊し、笑顔のままテーブルに冷麺を並べる奥さん。彼女のこういうところも憎めないから不思議なのだけど。
そんな奥さんがジロジロと匡介さんに握られたままの手を見つめてニヤついてる。焦って匡介さんから自分の手を取り戻したが、奥さんは「ごゆっくり~」と楽しそうに店長に話に行ってしまった。
昔からの知り合いにこんなところを見られて、恥ずかしいの照れ臭いのかよく分からないまま匡介さんの様子を窺った。