桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「辛いのも平気だったんですね、私はてっきり……」
私が食事を終えるのを黙って待っていた匡介さん、激辛冷麺を残さず食べた彼にそう尋ねてみる。
以前出かけたとき、彼は甘いハニートーストのお店に私を連れて行った。もしかしたら匡介さんからこの料理を嫌がられることも覚悟していたのだけど……
「ああ、普段あまり辛い物を好んでは食べないかもしれない。だが、あの店のは杏凛が勧めてくれるだけあって美味い冷麺だった」
「そうですか、それは良かったです」
鏡谷コンツェルンの御曹司である匡介さん、なのに彼は私の行きつけ小さな食堂でもこうして美味しいと言ってくれる。普段彼が外で食べている食事の方がきっと何倍も高級で美味しいでしょうに。
けれどふと思い出す、匡介さんは使用人の寧々が作る食事にも決して文句なんて言ったことが無い。彼女が作る料理も素朴なものが多いのに。
「匡介さんは寧々が作るような食事がお好きなんですか?」
「確かに彼女の作る料理も美味しいとは思うが、本音を言えばもっと好きな料理もある」
意味ありげにじっと見つめられて、私はつい首を傾げてしまう。寧々の食事よりも好きな料理……もしかしてよく聞く母の味、というものだったりするのかしら?
「それって、もしかして……?」
「ああ、寧々の料理と一緒に並べられる君の作った料理。俺はそれが一番好きだ」