桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「気付いていたんですか、匡介さん!」
どうして? 私は一言も匡介さんにその事を伝えたことは無かった。一緒に料理を作ってくれる寧々にも、彼には言わない約束をしていたし、簡単にバレるはずはないのに。
私が作ったものを食べて欲しいなんて可愛らしく言えるはずもなく、こっそり寧々の作った料理の中に一品だけ加えてもらったりしてた。
絶対に匡介さんに気付かれない自信があったのに……
「当たり前だろう、妻の作った料理にも気づけないような間抜けな夫ではないつもりだ。君が隠しているようだから黙っていたが、俺にとっては杏凛の料理が一番なんだ」
一番好きって、私が作っていたのは簡単なおひたしや和え物じゃない。それをまるで特別なご馳走みたいな言い方をするから、恥ずかしくて顔を上げる事も出来ない。
もちろんそう言われて嬉しいのだけど、今まで匡介さんがちゃんと分って食べてくれていたのだと思うと胸の奥から喜びが溢れそうになる。
どうして私をこんなにも喜ばせてくれる男性が匡介さんただ一人なのだろう? どうして……私はこの人とたった三年間の契約結婚を結んでしまったの?
「嬉しいです、そう言って頂けるだけで作ったかいがありました」
匡介さんと一緒にいると喜びの隣に寂しさが付いてまわる、どれだけ今幸せを感じてもそれはほんの一時の事。必ず来る別れの時が辛くなるだけなんじゃないかって。
そう考えれば考えるほど、うまくいつもの表情が作れなくて……
「杏凛、顔色がよくない。そこのカフェで休もう」
「……はい」
これからしっかりしなくてはと思うのに、反対に余計匡介さんに気を使わせてしまう事になってしまった。