冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「おまえのお節介は昔からだし、もう慣れた」
「でも、泣かせてはいないから。いや、桜ちゃんは気が強いタイプではないし、もしかしたら泣いちゃうかなーとか思ってたけど、全然だったわ。どっちかっていうと、常に笑ってた」
「出穂はあたりが柔らかいだけで、弱いわけじゃない」
ふたりが会話をしている間に、タッパーの蓋をしめて冷蔵庫に隠す。
せっかくなら、ラッピングしたものをきちんと渡したいので、それまではバレンタインのチョコの存在は秘密にしておきたかった。
「しかし、すっかり懐かれちゃってるじゃん。まぁ、桜ちゃんからしたら、拾われた親鳥に懐くのは当たり前だし、恋愛感情にプラスして家族愛みたいなものも混じってるのかもね。これ、別れるとき相当揉めるよー……って、桜ちゃん桜ちゃん、今俺、殺されそうな目で睨まれてるんだけど」
冷蔵庫を静かにしめてから振り向く。
私に助けを求める佐鳥さんに「予定にないから問題ない」と刺々しく言った岩倉さんが、私に視線を移すので肩が跳ねる。
背中側の冷蔵庫はどうしても死守したい……と内心、冷や汗を流していると「出穂」と呼ばれた。
「……はい?」
じっと見つめられる。
どうしたのかと思って首を傾げた私に、岩倉さんは少し嫌そうに眉間にシワを寄せた。