冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「俺は、愛を語ったんじゃない。侮辱しているのかと聞いただけだ。記憶が曖昧なのに適当な発言をしておかしなネタを佐鳥に吹き込むな」

『私、何もあげられないから恋人にはなれないって言ったんです。そしたら、侮辱しているのかって怖い顔されました。見返り欲しさに愛を語ってるわけじゃないと……なんか、ちょっと違うかもしれませんが、岩倉さん、そんなようなことを言ってました』

あやふやな説明をした覚えはあったので、苦笑いを返す。

「あ、ちょっと違うかなとは思ったんですけど……すみません」
「いや、語ってたんだよ、どうせ。でも恥ずかしいからこう言ってるだけ……いって。なに、うわ、すぐ殺人鬼の顔するじゃん」

岩倉さんに睨まれた佐鳥さんは「いつまでいる気だ。帰れ」と、強引に追い出されたのだった。



その日の夕食は、「どうしても私が作りたいんです」と言い、岩倉さんのキッチンへの侵入を阻止し、冷蔵庫を死守した。

そして、ふたりして食べ終えたあと。

「あの、これ、よかったら」

ソファに座る岩倉さんに、ラッピングしたチョコサンドを差し出した。
見るからに手作りだとわかるラッピングだったからか、岩倉さんは受け取りながら「作ったのか?」と聞く。

同じ部屋に住みながら内緒でチョコを作るなんて土台、無理な話だったのだ。
きっと、帰宅時に部屋に漂っていたチョコの香りで気付いていただろうに、そう聞いてくれる岩倉さんに頬がゆるむ。

知らないふりが嬉しい。

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