冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「はい。お店に並んでたチョコはなんとなく岩倉さんにあげたいと思うイメージじゃなかったので……簡単にですが、作りました。岩倉さんへの気持ちを形にしたくて」
「どんなイメージだったんだ?」
岩倉さんが聞くのも無理はなかった。
イベント会場にはそれはもうたくさんの種類のチョコが並んでいたから。
「丸くて、ふわっとしてギュッとしてるイメージです」
それは、岩倉さんからもらった気持ちそのもののだ。
岩倉さんの私に向ける態度や眼差しや声は、いつも丸くて優しい。ふわっとしてて柔らかくて、私を傷つけない。
でも、ただ優しいだけじゃなくて、私のことをしっかり抱きとめて支えてくれる。
岩倉さんからもらう感情はいつもまんまるで、私の欠けている部分に柔らかく浸透して癒してくれた。
今思えば、それをチョコで表す必要はなかったしそもそも無理があるけれど、でも、渡したいと思ったのだから仕方ない。
擬音だらけの説明をした私に、岩倉さんはふっと表情を緩めた。
「ありがとう」
目を合わせたまま微笑んで言う岩倉さんに、胸を射抜かれる。
チョコを渡すというミッションが無事成功して気が抜けていた私は、真正面から、珍しい岩倉さんの微笑みをくらってしまった。
目に毒なほど魅力的な笑みを向けられ、ドキドキ駆け足になった心臓の前で手を握った。
「あの、甘いものが苦手なのは知っているので、一応ビターチョコを使ってますが、無理して食べなくても大丈夫なので。無理だったら私が食べますし、私は、その、岩倉さんに受け取ってもらえただけで十分嬉し……」
「いや、俺が食べる。代わりにこれはおまえが食べろ」
立ち上がった岩倉さんが、ソファの横に置いてあった大きめの紙袋を渡してくる。
中には市販のチョコが大量に入っていて驚いた。