食リポで救える命があるそうです
・
・【美容】
・
リュートさんと日々を暮らしていて、私は大変なことに気付いていなかった。
それは美容だ。
日々の激動に飲み込まれて、美容液を塗ったり、そもそも化粧を全然していないことに気付いたのだ。
自分で具現化魔法が使えるようになった今、美容液は良いモノを使いたい放題なわけだから……って!
「私、化粧には全然金掛けて無かったわ!」
つい声が出てしまった。
私は手に入れたお金を全て、食べ物と漫画に使っていたので、化粧品は全然なのだ。
「せっかく何でも作り出せるのに、こんな安物の美容液だけしか知らなくて、それ以上は出せないなんて……」
せめて試供品をやりまくっていれば、少量でもモノを知っていれば。
仕方なく、私は顔に安物の美容液を塗って、久しぶりに口紅をして、リュートさんの前に現れてみた。
するとリュートさんは何だか背筋を凍らせ、こんなことを言い出した。
「ユイ、獣、生かじりしたのか……?」
一瞬言っている意味が分からなかったけども、すぐに口紅が何らかの獣の血に見えていることを察した。
「これは口紅と言って、血色良く見せる装飾品みたいなモノっ」
「何だ……怖かった……襲われると思った……」
「リュートさんのこと襲うほどバカじゃないですよ、絶対勝てないじゃないですか」
「でも何か勢いはあった」
勢いも無いだろと思いつつ、私は朝の掃除をしようと思ったら、リュートさんが、
「何か顔もビチャビチャいってるな、どうした? 獣の汗を浴びたのか?」
「これは美容液という肌にハリを出す液体を塗ったんです」
「そんなことしなくても、ユイはいつも綺麗だぞ」
はい、出た、男性の何もしなくても綺麗だぞ、のヤツ。
優しさなのか何なのか知らないけども、こっちは頑張ってやってるんだから、それを認めた上で何か褒めるんだよ。
ちなみに”もっと綺麗になったな”が理想ね。
リュートさんは続ける。
「あんまりビチャビチャして、部屋汚すなよ」
「汚さないですよ!」
「そんな大きな声で言わなくても分かったけども、汚すなよ」
「だから美容液で部屋を汚すとか無いんですよ!」
リュートさんはまだあんまり納得いっていない顔をしながら、缶の中に入っているクッキーをボリボリ食べ始めた。
コイツ、朝起きてすぐクッキー食べるじゃん、と思った時、ふと思った。
それはリュートさんが歯磨きしているところを見ないということ。
そう言えば、口臭はいつもその日に食べたモノの香りをさせていたな、この人。
私はコップと歯ブラシと歯磨き粉を具現化魔法で出させてもらって、ずっと使っているけども、リュートさんはせっかくリュートさんの分の歯磨きセットを出したのにも関わらず、使っている様子は無い。
えっ、何、汚っ、汚いのは何よりもリュートさんの口の中じゃん。
ちょっと指摘しておこう。
「というかリュートさん、歯磨きしたほうがいいですよ?」
「歯磨きって何だ? あれか? たまにユイがシャカシャカ歯を削っているヤツか?」
歯磨きを知らないだと……? というか歯は削っているわけじゃないんだよ。
「あれ磨いているんですよ、虫歯になるとダメなんで」
「虫歯……? えっ? ユイって虫歯菌殲滅を子供の頃、やんないの?」
「何ですか、虫歯菌殲滅って」
「虫歯菌殲滅する魔法があるんだよ、それさえすれば虫歯なんてならないぞ」
私はビックリして目を丸くした。
というか、それなら!
「虫歯菌殲滅して下さいよ!」
「それはダメだ、俺はできない。リホウくらい大きな都市の百貨店に行かないとそれできる場所は無いかな」
「じゃあ連れてって下さいよ! そんなんあったなら歯磨きなんてしな……いや! するわ! 口臭気になるからするわ!」
「何だよ一人で興奮してうるさいな」
そう言いながら、バカにしたような顔をしたリュートさん。
いやいや
「リュートさん、普通に口臭とか気にならないんですか」
「口臭? 口の匂いか、まあ口から食べ物の匂いがするって高貴なことだから、食べ物食べたらそのままがマナーだよな」
「どんな世界ですか! 人から食べ物の匂いがしたら嫌でしょ!」
「いやいや、食べ物を食べられるほど高貴な存在という意味だから、食べ物の匂い香らせたら素敵だろ」
まさかそんな価値観になっているとは……それがこの飢餓が蔓延している世界ということなのか……。
でも
「私はミントの香りとか、柑橘の香りとかしたほうがいいと思いますけどもね」
「じゃあそのミントや柑橘とやらを出せばいいよ、俺それ食べるから」
「いやもう歯磨きして下さいよ」
「でも歯を削るのはちょっと……」
「だから! 削ってるわけじゃないんですよ!」
世界によって考え方って様々だな、と思った。
・【美容】
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リュートさんと日々を暮らしていて、私は大変なことに気付いていなかった。
それは美容だ。
日々の激動に飲み込まれて、美容液を塗ったり、そもそも化粧を全然していないことに気付いたのだ。
自分で具現化魔法が使えるようになった今、美容液は良いモノを使いたい放題なわけだから……って!
「私、化粧には全然金掛けて無かったわ!」
つい声が出てしまった。
私は手に入れたお金を全て、食べ物と漫画に使っていたので、化粧品は全然なのだ。
「せっかく何でも作り出せるのに、こんな安物の美容液だけしか知らなくて、それ以上は出せないなんて……」
せめて試供品をやりまくっていれば、少量でもモノを知っていれば。
仕方なく、私は顔に安物の美容液を塗って、久しぶりに口紅をして、リュートさんの前に現れてみた。
するとリュートさんは何だか背筋を凍らせ、こんなことを言い出した。
「ユイ、獣、生かじりしたのか……?」
一瞬言っている意味が分からなかったけども、すぐに口紅が何らかの獣の血に見えていることを察した。
「これは口紅と言って、血色良く見せる装飾品みたいなモノっ」
「何だ……怖かった……襲われると思った……」
「リュートさんのこと襲うほどバカじゃないですよ、絶対勝てないじゃないですか」
「でも何か勢いはあった」
勢いも無いだろと思いつつ、私は朝の掃除をしようと思ったら、リュートさんが、
「何か顔もビチャビチャいってるな、どうした? 獣の汗を浴びたのか?」
「これは美容液という肌にハリを出す液体を塗ったんです」
「そんなことしなくても、ユイはいつも綺麗だぞ」
はい、出た、男性の何もしなくても綺麗だぞ、のヤツ。
優しさなのか何なのか知らないけども、こっちは頑張ってやってるんだから、それを認めた上で何か褒めるんだよ。
ちなみに”もっと綺麗になったな”が理想ね。
リュートさんは続ける。
「あんまりビチャビチャして、部屋汚すなよ」
「汚さないですよ!」
「そんな大きな声で言わなくても分かったけども、汚すなよ」
「だから美容液で部屋を汚すとか無いんですよ!」
リュートさんはまだあんまり納得いっていない顔をしながら、缶の中に入っているクッキーをボリボリ食べ始めた。
コイツ、朝起きてすぐクッキー食べるじゃん、と思った時、ふと思った。
それはリュートさんが歯磨きしているところを見ないということ。
そう言えば、口臭はいつもその日に食べたモノの香りをさせていたな、この人。
私はコップと歯ブラシと歯磨き粉を具現化魔法で出させてもらって、ずっと使っているけども、リュートさんはせっかくリュートさんの分の歯磨きセットを出したのにも関わらず、使っている様子は無い。
えっ、何、汚っ、汚いのは何よりもリュートさんの口の中じゃん。
ちょっと指摘しておこう。
「というかリュートさん、歯磨きしたほうがいいですよ?」
「歯磨きって何だ? あれか? たまにユイがシャカシャカ歯を削っているヤツか?」
歯磨きを知らないだと……? というか歯は削っているわけじゃないんだよ。
「あれ磨いているんですよ、虫歯になるとダメなんで」
「虫歯……? えっ? ユイって虫歯菌殲滅を子供の頃、やんないの?」
「何ですか、虫歯菌殲滅って」
「虫歯菌殲滅する魔法があるんだよ、それさえすれば虫歯なんてならないぞ」
私はビックリして目を丸くした。
というか、それなら!
「虫歯菌殲滅して下さいよ!」
「それはダメだ、俺はできない。リホウくらい大きな都市の百貨店に行かないとそれできる場所は無いかな」
「じゃあ連れてって下さいよ! そんなんあったなら歯磨きなんてしな……いや! するわ! 口臭気になるからするわ!」
「何だよ一人で興奮してうるさいな」
そう言いながら、バカにしたような顔をしたリュートさん。
いやいや
「リュートさん、普通に口臭とか気にならないんですか」
「口臭? 口の匂いか、まあ口から食べ物の匂いがするって高貴なことだから、食べ物食べたらそのままがマナーだよな」
「どんな世界ですか! 人から食べ物の匂いがしたら嫌でしょ!」
「いやいや、食べ物を食べられるほど高貴な存在という意味だから、食べ物の匂い香らせたら素敵だろ」
まさかそんな価値観になっているとは……それがこの飢餓が蔓延している世界ということなのか……。
でも
「私はミントの香りとか、柑橘の香りとかしたほうがいいと思いますけどもね」
「じゃあそのミントや柑橘とやらを出せばいいよ、俺それ食べるから」
「いやもう歯磨きして下さいよ」
「でも歯を削るのはちょっと……」
「だから! 削ってるわけじゃないんですよ!」
世界によって考え方って様々だな、と思った。