好きだよ。。。
「つぐみ、今日はずいぶんおそかったのね。残業、そんなに大変だったの?」

心配顔の母が言う。

「えっと・・・ごめんなさい、残業は9時には終わってたんだけど、そのあと友達と夕食食べてたの」

「だったら!電話くらいしなさい。朝早いパパがついさっきまで起きて待ってたのよ」

父は、IT企業に勤めるサラリーマンだ。根っからの仕事人間で、定年間近の今でも残業は多い・・・と言っても、8時には家に帰り母の夕食を食べるのだけれど。

「ごめんなさい。(つとむ)兄さんももう帰ってる?」

勉兄さんは、イタリアンレストラン”Florence"(フローレンス)のシェフをしている。10時閉店で片付けもあるけど、もしかしたらもう帰ってるかも。私とは2つ年が離れていて、私のよきアドバイザーだ。その勉兄さんも、8か月後には結婚する。

母がため息をついて言う。

「今、お風呂に入っているところよ。つぐみも勉が上がったら、さっとと入っちゃいなさい」

「うん。これからは、あんまり心配かけないようにするね」

「分かってくれたらいいのよ」

勉兄さんに、翔太君のことを早く報告したいのは山々だが、今日はもう遅い。よりにもよって、お店の定休日の水曜日に出逢うんだもんなぁ。まぁ、それまでに進展してたら、それも含めて報告しよう。

「あがったよ。おぅ、つぐみ。遅かったな。仕事か?」

「仕事、プラスアルファ・・・」

「??」

「水曜にゆっくり話すわ。おやすみ、勉兄さん」

「おぅ。おやすみ」

こんな挨拶ができるのも、あと8ヶ月かぁ。婚約者の留美さんは、しっかり者の素敵な人だ。似たもの夫婦になりそう、って感じかな。

「お風呂、入ってくるね、ママ」

「私は、もう寝るから、換気扇はそのままにしておきなさい」

「分かった。おやすみ」

勉兄さんが遅いときは、敢えて起きていることもしないのに、やっぱり私、女の子扱いされているんだなぁ。遅くなることもあるかもしれないから、早めに彼氏が出来た、って、伝えておこう。




< 16 / 29 >

この作品をシェア

pagetop