飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「はあ、腹いっぱい。千夏はどんどん料理が上手になっていくな」
車のシートを倒して、櫂さんはゴロンと横になるような体勢をとる。その様子が子供っぽくてちょっと可愛いと思ってしまった。
空になったお弁当箱を片付てバッグに仕舞うと、私も櫂さんと同じようにシートを倒してその場で仰向けになる。見えるのは車の天井だけど、それでも何だか気持ち良かった。
「美味しそうに食べてくれる人がいますからね、それは頑張りがいもあるってものです」
櫂さんは私の料理が失敗しても決して怒りはしない、ちゃんと食べて美味しいと笑ってくれる。でも本当に美味しいものを食べさせてあげたいから頑張ろうって思えるの。
だって櫂さんはいつも私にやる気や勇気をくれる、そんな特別な存在だから。
「あーあ、こんなに腹が膨れたらいちご園には行けないかもしれない。流石にもう入らないかもなあ?」
「え! 何でですか、フルーツは別腹ですよ⁉」
私が驚いてそう言って櫂さんに詰め寄ると、彼は「ぶぶっ」っと吹き出しそのままゲラゲラと笑い出してしまう。シートの上で横向きになり、背中を丸めるほど笑わなくてもいいのに……!
笑い過ぎてお腹が痛いのか、櫂さんは両手でお腹を押さえてヒーヒー言っている。
「笑い過ぎですよ!」
「だって……千夏がデザートは別腹、みたいなすごい勢いで迫ってくるから! ははっ」
だってそうじゃないの? きっと梓乃なら分かってくれるはず! それなのに、櫂さんは一人で楽しそうに笑い転げるだけ。さすがにちょっとムッとしてしまう。