飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
今まで好きなものを食べたいと言える環境ではなかったせいか、櫂さんに対してはずいぶん我儘になってしまうのかもしれない。
だって何だかんだと彼が私の希望を叶えてくれることを分かっているから。
「食べたいんですもん、イチゴ……」
「止めて、そんな目で見ないでくれないか」
ジトッと上目遣いで櫂さんを見上げれば、今度はそんな風に言われて混乱しそうになる。ええ、そんなに私とイチゴを食べるのが嫌ですか?
言い出したのは櫂さんのはずなのに、いきなりお預けなんて酷いと思っていたら……
「冗談だよ、そんな顔されたら連れて行かないわけにはいかないだろ? そういうの自然にやるのが千夏だから困る」
何が困るのかの説明はしてくれないのに、文句を言われても困るんですけど。でも連れて行ってくれるという言葉で落ち込みそうだった私のテンションはすぐに上がる。
ウキウキとする私を助手席に乗せて、車はいちご園へとむけて走り出した。
「砂浜を走るって爽快ですね、また来たいです」
「ああ、千夏が行きたいところは全部俺が連れて行ってやる。約束するよ」
この言葉を櫂さんはどんな気持ちで言っているのだろうか? 契約が終わった後も彼は私をいろんな場所に連れて行ってくれるのか、それは聞けないままだったけど。