飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「……?」

 その日の深夜、ヘッドボードに置かれていたスマホの振動で目が覚める。こんな時間に私のスマホが鳴る事はない、きっと(かい)さんに用があるのだろうと彼の肩を揺すって起こす。
 電話の相手は誰かと思い、画面をそっと覗き込んで息が止まりそうになった。

二階堂(にかいどう) (はぎ)

 まさか、こんな深夜に父が櫂さんに電話をしてくるなんて。動揺して私が勢いよくスマホから離れたためか、まだ眠っていたはずの櫂さんが目を覚ます。
 
「櫂さん、電話が鳴っているみたいですけど……」

 私は何も見ていない、何も気付いてない。そう自分に言い聞かせて、いつもと変わらないようにそう伝えてみたのだけれども。

「ああ、ちょっとあっちの方で話してくるよ。千夏(ちなつ)は気にせず眠ってて」

 起き上がりスマホを確認した櫂さんは、そう言うとベッドから降りて一人で部屋から出ていってしまう。
 少しでも話の内容を知れないかとドアに耳を付けてみるが、外にでも出てしまったのかシンとして櫂さんの声は聞こえてはこなかった。
 しばらくそのままでいたが身体が冷えてしまい、諦めてベッドへと戻る。黙って毛布に包まったまま櫂さんが戻ってくるのを待っていたが、彼が戻ってきたのは三十分以上経ってからの事だった。

「まだ起きていたの? 寝てて良かったのに」

「いえ、ちょっと目が覚めちゃって。大事な話だったんですか、こんな時間に」

 相手が父だと分かっているのに、それを口にすることは出来なくて。こんな遠回しな聞き方をしてしまう、それでも何か話してくれたらと少しの期待を込めて。だけど……

「気にしなくていい、千夏には関係のない話だよ。さあ、もう少し寝よう」

 そんな風に誤魔化され、何も教えてもらえない。大事にしてもらってもその程度の存在でしかないのかと、悔しさと悲しさでその夜は上手く眠れなかった。


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