飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
キッチンに入るとサッと手を洗い冷蔵庫を開ける櫂さん。中にはたくさんの食材が並べられていて、そのいくつかを手に取り確認している。
……もしかして櫂さんは料理も出来たりするの? 実は私は部屋に篭っていたこともあり、まったく料理を作ったことが無い。
キッチンに入る事は許可されていなかったし、誰かに料理を作ってあげる必要もなかったから。
「千夏は何が食べたい?」
当たり前のように私の食べたいものを聞かれて、何と答えればいいのか分からなくなる。今まで誕生日ですら自分の食べたいものについて聞いてもらえたことなんてなかったのに……
「私が決めてもいいんですか? 何かの記念日でもないのに」
「当たり前だろ、二人の食事なんだから千夏にもメニューを考えてもらわないと。それに今日は二人が暮らし始める記念日でもある、少しくらい我儘も言ってみせろ」
どうして櫂さんは私が嬉しくなるようなことばかり言ってくるんだろう? ちょっと意地悪な時もあるけど、なんだかんだと私を甘やかして大事にしてくれているような気がする。
契約結婚とはもっと冷たく感情など必要としない関係だと思ったのに、私たち二人の間にはふんわり優しい温かさを感じていた。
……でも、いったい何故かしら? 強引な櫂さんの言動にこんなにも心地良さを覚えてしまうのは。