飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
本当に甘えて好きな食べ物を言ってみてもいいのかしら、それとも図々しいと思われる? 普段使用人との会話しかないので、櫂さんとのそういった距離の取り方も分からない。
そうやって頭の中で答えを出せずもじもじとしてしまっていると、額をこつんと叩かれてしまった。
「千夏は余計なこと考えすぎ、素直に食べたいものを俺に教えてくれればいいんだよ」
櫂さんの優しい言葉に、これまだ感じたことのない胸の温かさを覚えた。私がそういう事に慣れて無くて戸惑っても、こうやってきちんと教えてくれる人なんだわ。
「……お、オムライスが食べたいです」
私の大好物だと兄や姉に知られてからは、めったに食事のメニューとして出てくることはなくなった。あの時から、私はずっと自分の好物さえも口にはしてはいけないんだって。
だからこれは随分勇気のいる言葉だった。
「オムライスな。ソースはデミグラス、それともホワイトクリーム?」
「えっと……その」
久しぶりの好物、どちらのソースもかなり魅力的だった。普段選ばせてもらえる様な立場ではなかったので、こんな時にスパッと決めきることが出来ない。
そんな私をじっと見ていた櫂さんは……
「じゃあソースは出来上がってからのお楽しみだな、千夏にはそれ以外の手伝いをしてもらおう」
「は、はい!」
そう言って櫂さんはもう一度冷蔵庫の中を確かめ、私に材料を手渡してきた。卵や鶏肉に玉ねぎ、その他の野菜や缶詰など慣れた手つきで材料を選んでいく。
そんな櫂さんの事をちょっとだけ頼りになる旦那様だって思ったことは、秘密にしておくことにした。