【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
俺は弓香さんのように才能のある人間ではないから、彼女の気持ちは全然理解らなかった。 でもワイングラス越し見つめる彼女の瞳は、言葉通り空っぽに見えた。
何もかもを手に入れているように周りからは映ったけれど。
「夜中まで仕事して、取材やテレビに出て家にもロクに帰れない日が続くと
自分が何をやっているのかなあって思ってしまう。 ただの主婦だったの…。
家族や娘が喜んでくれるのが嬉しくって、ただ料理が好きだった普通の人だった。 不思議ね、そういう風になっちゃうと何も手にしていなかった普通の自分の方が幸せだったって思っちゃうなんて。
人って無いものねだりだから仕方がないのかもしれないけど…。 あなたに今日炒飯の作り方を教えて、娘が嬉しそうに食べてくれた時の事を思い出しちゃったわ…」
「弓香さん…」
「私、もしかしたら離婚するかもしれないの」
「え……」
顔を上げた弓香さんは、笑ってはいたけれど目に光は灯されていなかった。 それがどこか切ない。