独占欲が止まらない。クールな社長の裏の顔。
玲は急に抱きしめられ驚いた顔をしていた。
だが、私を抱きしめ返してきた。

「深山…俺は昨日まで仕方がないことなのかもしれない、と半ば諦めようとしていたんだ。けど…お前と昨日から過ごしてみてこんなに胸が温かくなった。もう後には戻れない。俺は自分の人生を諦めたくない。」

「玲…。」

「俺は深山といて血が通ったように思うんだ。お前は確かにいつも仕事ではミスが多い。ただ、ミスを挽回しようと努力する姿にいつも目がお前を追っていた。語学が堪能だから、とあぐらをかいていてもおかしくないのに秘書としての役割を果たそうといつも前向きだ。時々方向性が違うがやはり前ばかり向いている。そんなお前が高所が怖いと泣く。お腹をぐーぐー鳴らすお前を可愛いと思ってしまったんだ。」

「玲…ちょっと恥ずかしいです。」

「社長という立場を利用して昨日から振り回してしまった。だが、一緒にいて、俺は離してやれないと思った。離れられないと。俺という人間を見て欲しいと思った。」

「玲が私をそう思っていたなんて気が付きませんでした。正直、玲は怖いと思ってました。冷静沈着で的確な指示。隙のない人だと。」

「そんなわけないだろ。急に社長になり、みんなからの信頼を得るためにそう振る舞っていただけだ。内心はいつでもこれで合っているのかと不安に思ってた。」

「そうだったんですね。なら成功です!不安なんて微塵も感じませんでしたから。」

「だからお前が真っ直ぐで羨ましかったよ。」

「私は鈍臭いから努力するしかないんです。努力しても報われないことが多いんですけど。だからいつも見掛け倒しと言われて…。語学だけしか強みがなくて。でもそれさえも家族がいたからであって私には他に何もないんです。見掛け倒しと言われても言い返せるものもないんです。だから玲に褒めてもらうものはないんです。」

「そんなことない。俺が好きになった深山を見下さないでくれ。」

玲を励ますつもりがいつのまにか私が慰められ涙が頬を伝う。

「玲、ありがとうございます…」

「深山、俺を見てくれないか。俺が俺でいられるように。」

「私にはそんな資格ありません。」

「ハハハ…資格なんか必要か?俺はお前が俺を見てくれるだけでいいんだ。頼む」
 
「わかりました!私が玲を見てますからね!」

2人で見つめ合い、なんだか笑ってしまった。
恥ずかしいような、くすぐったいような気持ちになった。
< 15 / 39 >

この作品をシェア

pagetop