販売員だって恋します
「いいんですか?」
「聞きたいですね。」
大藤はその整った顔でにっこり笑った。

では、
「前菜のカルパッチョですが、綺麗に盛り付けされていましたけどソースは市販のドレッシングですね。白身は生のお刺身でしたけど、おそらく赤身は冷凍。魚料理は温め直しでした。
お肉は質が良くないのに下ごしらえが甘い。デザートもほぼ市販品のアレンジでしたね。」

むしろ、市販の品物にこの値段をつけるための工夫がすごい、と思ったけれど。
「お味がわかる方にはおススメしません。」
由佳は淡々と思ったことを伝えた。

ふっと一瞬息を漏らした大藤が、あはは……と笑い出す。

「すごいですね。あなた、何者なんです?確かに違和感はあったけれど、私ですら、そこまでの分析はできませんでしたよ。」
「実家が料理屋なんです。」

「なるほどね……。今後は美味しい料理を探すときはあなたを連れて行くことにしましょう。」

犬じゃなんだから、やめていただきたい……。
大藤は楽しそうに、ワインを口に運んでいた。

「工夫されていて、素晴らしいとは思いますよ。」
由佳が小さな声でそう言うと、大藤が柔らかく首を傾げる。
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