氷雪の王は温もりを知る
 顔の前で両手を振っていると、「真白!」と弾んだ声に呼ばれる。
 振り返ると、目の前には息がかかるくらい近くで笑みを浮かべたポランが居て、両頬を大きな冷たい手で包まれたのだった。

「ポラン様……」
「きっと、真白はこの事を教える為に、この国に……この城に来てくれたんだな」
「そ、そんな事は……」
「これからは好きなだけ、この城に滞在していいからな」

 最初の冷たい雰囲気はどこに行ったのか、相好を崩して私の頬を包むポランは、喜びに溢れていた。

「ありがとうございます。それなら、元の世界に帰るまで、お世話になります」
「せっかくだから、真白が住んでいた国について教えてくれ。雪はどう対処していた? 国王はどう統治していた?」
「あの……」
「ポラン様、顔が近いです。真白様が困っています」
「す、すまない!」

 フュフスに言われて、ようやく、ポランは私の頬から手を離すと、代わりに手を差し出してきたのだった。

「これからよろしく頼む。真白」
「よろしくお願いします」

 握り返したポランの手は、やはりひんやりとした冷たく大きな手であった。
 それでも、人に触れられたという歓喜の熱に満ちていたのだった。
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