涙の涸れる日
佑真

最低な二人

 紗耶がマンションを出て行ってから……。

 毎晩、仕事が終わって灯りも点いていない部屋に帰宅すると、紗耶に電話を掛ける。

 呼び出し音が聞こえるだけ……。
 紗耶は出てもくれない。

 それが一週間経って、紗耶の携帯に繋がらなくなった。

 お義兄さんのマンションに居るのは分かっているが、行けない。行っても追い返されるに決まってる。

 由布子から、きょうも呼び出されたが断った。
 正直、由布子の事なんて、どうでもいい。

 あの日、俺は仕事帰りに由布子のアパートに寄って彼女を抱いた。最低だと自分でも思う。

 紗耶はどうしてあの日に出て行ったのか?

 仕事が忙しくて残業続きで、毎日帰宅は遅くなる。

 あの日が特別遅かった訳じゃない。

 紗耶は由布子の存在を知らない筈だ。

 なのに何故あの日なんだ?

 もしかして由布子が紗耶に何かしたとしたら……。

 あの日は暑い日で汗をかいたから由布子のアパートでシャワーを浴びた……。

 その間に俺のプライベートな携帯から紗耶の番号を手に入れたとしたら……。

 紗耶に電話したのか?
 俺との関係を話したとしたら……。

 紗耶は泣いていたとお義兄さんは言った。


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