まるごと愛させて
さて、さっさとお風呂入って寝なきゃ。
明日は保育園おわったら和樹と決戦だ。

お酒も入ってたからか、それともアランと楽しい時間を過ごせたからか、
ベッドに入るとすぐに眠る事ができた。



朝8時
ーーーージリリリリ

聞き慣れたアラーム音と止めてのそのそとベッドから起き上がる。

うちの園ではシフト制で
早番、中番、遅番とあり、今日は中番の週。

中番は朝9時出勤6時退社だ。


あー、少し飲みすぎたかな。
さすがに。
若干の二日酔い。

保育士の仕事は基本的に体資本だ。
朝から汗を流すこともある。
その為の化粧は最低限に留めている。





ーーーーーーー午後6時20分。

保育園を出て、深呼吸してから
和樹に電話を掛けた。
サラリーマンの和樹ならもう仕事は終わってるはずだ。


プルルル、プルル

「もしもし!唯!!!」

電話先で慌てた声が聞こえた。

「うん、仕事終わった?」

「終わってるよ。もうすぐ家着くとこ。」

「じゃあ、和樹の最寄りのいつものカフェで待ってて。今から向かうから。」

「え、カフェ??俺んちじゃダメなの?」

「うん。カフェで待ってて、じゃあね。」

和樹の返事を聞かずにプチっと電話を切った。
いつも話し合いの時は大抵和樹の家でするけれど
別れを腹に括った私はもう家なんて行かない。
人の目があった方が和樹も感情的にならないだろう。

3駅先の和樹の最寄り駅に向かう。

電車が来る間、お昼休みに来ていたアランからのLINEの返事を返す。

『アランです。体調は大丈夫ですか?俺は今から出勤です。』

午後12時半過ぎに来たLINE。
返す時間も無く、今まで返さずにいた。

『朝は少し気分悪かったけど仕事してる内に忘れちゃいました!頑張ってください。私は今終わりです。』

当たり障りのない文を返信して携帯をカバンにしまい込んだ。




ーーいらっしゃいませ。

店員さんの声を聞きながら店内を見渡す。

あ、いた。

「すみません、あそこと一緒です。」

店員さんに断りを入れて和樹が座る向かいの席に
座った。

「唯、おつかれ。」

相変わらずな人懐っこい笑顔を私に向ける。
そういえば、わたしこの笑顔がきっかけで好きになったんだっけ。

「お疲れ様、待たせてごめんね。」

近くの店員さんにブレンドコーヒーを頼むと
ひと息ついた。
がんばれ、私。

「唯!あの…ほんとごめん。唯を裏切るつもりは全然なくて、ただ、可愛い子だったから、お酒も入ってて、」

「うん、もう大丈夫だよ。」

私がその一言を発するとパァっと喜びが顔に現れた。
ほんとにわかりやすいね。

「和樹、別れよっか。」

静かに戸惑いなく和樹に初めて別れを告げた。
「唯!どうして?今までずっと一緒にいたじゃん!」

そうだね、私にとって3年間の時間はすごく、
長い時間だったし、和樹が居てくれた事で仕事も頑張れてた。

「でもね、私もうダメなんだ。和樹のこと嫌いじゃないけど一緒にいても意味ないの。…それは、和樹も一緒でしょ?長い時間一緒に居たから良くも悪くも空気なんだよ、私たち。居ても居なくても一緒の存在。違う?」

だからここ最近はデートと言うものも無くなって、
休みの日に会うけど、家でえっちして終わり。
えっち後のアフターケアもなし。

「違う!違うよ。俺は。確かに唯に沢山甘えて俺がフラフラしてるせいで唯のこと傷つけちゃったけど、唯と離れるなんて考えたこと無かったよ。」


和樹はずるいね、何回も浮気したのは和樹なのに。
そんな泣きそうな顔見せないでよ。
まるで私が悪いことしてるみたい。

「ブレンドおまたせしましたー!」

コト。と目の前に出されたコーヒーをひと口飲んだ。

「唯、ミルク入れないの?」

そうだね。いつもならブレンドにはミルクを入れてるもんね。
私に関心がなくなった訳じゃないんだ。

「うん、今日はいいの。」 

コーヒーの苦味を味わってないと、
また和樹に上手く丸め込まれそう。

「…そっか。唯、別れるなんて言わないで。お願い。」

「そんな事言って、しばらくしたらまた和樹は他の女の子に目がいくよ。」

これまでもそうだった。

「今回は!「いかないって言い切れる?これ、何回目だか分かってる?」

言葉の途中で遮ってそう言い放つ。

「言ってみて、今回何回目だった?」
「……6回目。」

これまで無いくらい強気に言うと、
ぽつりと呟いた。

「やっぱそうか〜!私が知ってるのは今回で4回目。」

「……。」

墓穴を掘ってしまったからなのか、
和樹は黙り込んでしまった。

「もしね、私が浮気してたらどうする?」

「そんなのっ!!許さない。」

勢いよくバッと立ち上がると周りのお客さんの視線が突き刺さる。

「とりあえず、座ったら。」

ゴトっと音を立てて和樹が座り込む。

「私は許して来たよ。」
「……。」
「和樹のこと好きだったから。死ぬほど苦しかったけど一緒に居たくて許したフリをしてきたの、今まで。」
「ごめん。」
「ううん。謝ってほしい訳じゃなくて。…ただね、もうホントに疲れたんだ。ホントは許せてないのに寛容なフリをして許し続けるの。」

そう、ホントは今まで浮気を許してきたわけじゃない。
自分で自分の心を騙してたんだ。

「…どうしたら、、もう一回俺のこと信じてくれる?唯。俺、唯がいないとダメだよ。」
「私も、ダメなの。和樹といるとダメになっちゃう。だからね、別れて欲しいの。」

お互いに無言が続く。
カバンからブーブーと、携帯が震える。

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね。」

カバンを持ちトイレに駆け込んだ。


カバンから携帯を取り出すと、、

「アラン…。」

そう、アランから返信が来ていた。
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