まるごと愛させて
すると直ぐに、電話がかかってきた。
出るか迷っていると、

「出れば??」
「口出ししないでよ。」

そう和樹に言って背中を向けて、電話にでた。

「もしもし。」
「もしもし、唯さん大丈夫ですか?」
耳元にアランの低音の声が響く。
「うん。大丈夫です。ゴタゴタに巻き込んでごめんなさい。こっちは大丈夫ですから。」
きっと、アランの事だ。無理して都合をつけてくれてるに違いない。
「でも、やっぱり心配なので行きますよ。昨日、あれだけ酔ってたのは彼氏のせいですか?」
「ほんとに大丈夫です。仕事中ですよね?」
「この時間は教材準備の時間なので、大丈夫です。俺が行ったらかえって迷惑ですか?」

もう、ほんとに情けない。
全然関係ないアランを巻き込んで、
いい大人なのに別れ話すらまともに出来ないなんて。

「ううん。そうじゃないけど。「それなら待ってて下さい。すぐに行きます。唯さんに聞きたいこともあるし。」

そうだよね、私アランに和樹がいる事言ってないもん。
「わかりました。ほんとにごめんなさい。」
「謝らないで、唯さん。俺がしたくてしてる事だから。なるべく人が居るところでいて下さい。すぐ行きます。」

アランの電話を切るとバチっと和樹と目があった。

「昨日会ったばっかの女を随分と心配するんだな、その男。」

嫌味ったらしく言ってきた和樹を無視して、
近くのベンチに座る。

アランに謝らなきゃ。
仕事中抜けまでさせて。
大丈夫かな。


「唯さん。」
そんなに時間は経ってないのに目の前にアランの靴が見えた。

「アラン…ほんとにごめん。よく分かったね。」
「いいえ、気にしないで。それに唯さんがどこにいても俺は見つけますよ。」

そう言って私の顔を覗き込む様にしゃがむ。
アランの純粋で真っ黒な瞳は私を包み込み様だった。

「…頬赤くなってる。痛くないですか?」

あ、さっきので。
「大丈夫です。」



「が、外国人??」

あ、そうだった。
和樹にはアランがハーフなんてことを伝えてないからこの反応をするのは当然だよね。

「あなたが唯さん彼氏ですか?」
「…お、おぉ。」
いきなり現れた自分より遥かに大きい男に明らかに戸惑っていた。
「あなたは唯さんが大切じゃないんですか?昨日から唯さんにこんな顔ばっかりさせて。」

…アラン、ほんとにありがとう。

「関係ないっすよね。昨日会ったばかりの人に唯の何がわかるんすか。」
「わかりません。俺はまだ唯さんの事全然知りません。でも、心配なんです。昨日からずっと。付き合ってるならもっと唯さんを大切に下さい。」

「アラン!違うの。私、別れたくて。別れ話を今日はしに来てたんです。」

アランの背中に話しかけると、
そっと振り向いて、

「そうですか。わかりました。」

それだけ言うとまた和樹に向かい会った。

「唯さんはあなたと別れたいみたいです。別れて下さい。」

「はぁ?なんで?つか唯もなんでそっちにいんだよ。」

アランの体を避けて私に近づいてくる和樹。
咄嗟にアランの背中に隠れた。
それが、気に食わなかったのか、

「ちょ、おい逃げんなよ。」

アランが体の向きを変えて、私を隠してくれた。

「やめて下さい。唯さん嫌がってます。」
「だから!関係ないっすよね!!」
「…あまり俺を怒らせないで下さい。」

低音の声が上回って低い声でそう言い放った。

「んだよっ!お前こそやっぱり浮気してたんじゃねーか!くそっ、もうお前なんていらねーわ。」


アランの背中越しに和樹が帰っていくのを見ていた。

「唯さん、これでよかったですか?」

「あ、うん。ありがとう。」
「ここに座ってて下さい。すぐに戻ります。」

アランはどこかに行ってしまった。
ベンチに座って顔を手で覆う。
はぁ、終わった。やっと。
ほんとはもっと円満に別れたかったんだけどな。
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