男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 サイラス様はゼネダ様の斜め向かいで足を止め、ジッと見つめる。私の位置からは角度的に、その表情は窺えない。
 なにかしら……?
 さらにサイラス様は、ゼネダ様に向かって小さな声で何事か告げているようだった。
「やれやれ、とんだ暴君もいたものです」
 サイラス様の言葉は私の耳に聞こえてこなかったが、ゼネダ様が呆れ眼でやれやれと肩を聳やかすのを見て私は内心で首を捻った。
「ゼネダ様?」
 ゼネダ様の辛口は常のことだが、サイラス様に対して『暴君』などという単語が出てきたことも意外だった。もしかして、なにか困難な用件でも指示をされたのだろうか?
「いえ、なんでもありません。それより、私は急用ができまてしまいましたので先にお暇します」
 ゼネダ様は苦笑と共に告げ、スックと立ち上がる。内容まではわからないが、やはり緊急の案件が発生したのはたしかなようだ。
「そうでしたか。相変わらずお忙しそうですが、どうかご無理なさらずに」
「ありがとう。ではセリウス、また」
 ゼネダ様は長衣の裾を靡かせながら戻っていった。
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